
「業務用ラップ」は、ホームセンターや業務用スーパー、ネット通販などで手軽に購入できます。その主流となっている素材「塩ビ」はご家庭向けに普及しているラップ素材と異なる特長があります。本記事では、塩ビラップの特長や安全性、飲食店で支持される理由などを解説します。
業務用ラップの代表格・塩ビラップ|
暮らしを支える素材の
使いやすさ・安全性

「業務用ラップ」は、ホームセンターや業務用スーパー、ネット通販などで手軽に購入できます。その主流となっている素材「塩ビ」はご家庭向けに普及しているラップ素材と異なる特長があります。本記事では、塩ビラップの特長や安全性、飲食店で支持される理由などを解説します。
目次
食品ラップには材質や厚み、用途に応じてさまざまな種類があり、業務用で主に使われるのが「ポリ塩化ビニル(PVC)」(以下、塩ビ)です。
塩ビは、私たちの暮らしや産業を幅広く支えるプラスチック素材です。耐久性、耐水性、加工のしやすさ、透明性に加え、用途に応じて性能を自在に調整できる点が大きな強みです。

・耐久性:素材の寿命が長く、壊れにくく劣化しにくい特長があります。
・安全性:燃えにくく、火災リスクを低減できます
・加工性:硬いパイプから柔らかなフィルムまで、用途に応じて形状を自由に調整できます
・透明性:包装やラップ用途に適したクリアな仕上がりです
・自在なカスタマイズ性:柔軟性、耐候性、透明度など、必要な機能を自在に持たせることができます。
塩ビは海水を天日乾燥して作られる塩を原料に約60%使用するプラスチックです。プラスチックといえばどれも石油100%でできていると思われがちですが、塩ビの約60%は海水由来のため、石油資源への依存を大幅に削減できます。海水から得られる食塩は安定供給が可能で、サステナブルな原料です。

塩ビは製造時に必要な石油資源エネルギーが21.3MJ/kgと、他の汎用樹脂に比べて約半分以下です。塩ビ製造工程における資源の合計エネルギー(46.1MJ/kg)は、包装材料によく用いられる低密度ポリエチレン(LDPE:72.2MJ/kg)の約64%にとどまり、エネルギー負荷の小さい優れた素材といえます。さらに、CO₂排出量も1.45g/kgと低く、環境負荷の低減にも貢献しています。
塩ビは、比較的安価に導入しやすいコストで安定供給される汎用プラスチックです。汎用製品にもかかわらず、水道や住宅、医療、さらには調理現場まで幅広い分野で大きな価値を生んでいます。
| インフラ | 水道管は50年以上の耐用実績があり、更新コストの大幅削減に寄与しています。電線地中化にも活用され、防災や景観改善にも貢献しています。 |
|---|---|
| 住まいと暮らし | 塩ビ窓はアルミ窓より耐熱性が高く、省エネ住宅の実現に役立ちます。さらに、床材や壁紙、文具やキッチン雑貨など、身近な生活の中にも広く浸透しています。 |
| 医療 | 輸液バッグやチューブに適した柔軟な素材を安定供給することができ、医療現場を支えています。 |
| 厨房まわり | 業務用では食品ラップなどの包装材やパッケージ資材、衛生関連資材として活用され、効率化と衛生管理の両立に貢献しています。 |
このように、塩ビはあらゆる場面で「暮らしの安心」と「経済的な持続性」を同時に実現し、社会に貢献している素材です。
ラップを含めた一般的な容器包装の廃棄方法は、主に以下の通りです。
| スーパー | 容器包装リサイクル法の対象で分別回収可能です。 |
|---|---|
| 家庭 | 食品が付着していると一般的に可燃ごみとして処理されます。 |
| 飲食店 | 事業系一般廃棄物として回収・焼却処理されるケースが一般的です。 |
ラップに限らず容器包装全般に言えることですが、食品の付着がある場合、各自治体の定めた方法に従って可燃ごみとして処理されることが多いです。しかし、塩ビ素材自体には高いリサイクル適性があります。
一般的にプラスチックの「マテリアルリサイクル(原材料として再利用すること)」は、元の製品に再生・利用する「水平リサイクル」が望ましいとされています。しかし、これは精緻な分別・選別を必要とし、結果的に高いコストと環境負荷を伴います。それにもかかわらず、塩ビは他の汎用プラスチックに比べて異物混入の影響が小さく、マテリアルリサイクルが容易な素材です。日本における塩ビのマテリアルリサイクル率は約30%を超えるとされており、国際的に見ても高い水準です。

ラップフィルムの厚さを意識したことはありますか?
一般的な事務用コピー用紙の厚みは約80~100ミクロンです。一方、多くの飲食店で使われている塩ビ製の食品ラップは、わずか10ミクロン未満の薄さしかありません。コピー用紙の1/8~1/10程度の極薄のフィルムでありながら、高い性能によって、幅広い場面で飲食店の現場を支えているのです。
塩ビラップは多彩な性能によって、食品分野のさまざまな場面で活躍しています。
よく見かける家庭用ラップが主に「食品保存」にとどまるのに対し、業務用を中心に活躍する塩ビラップは伸縮性と作業性に優れたフィルムであるのが特長で、スーパーマーケットの食品パック作業・品質保持や、レストラン厨房での調理作業や衛生管理まで幅広く貢献しています。また、目視確認に欠かせない高い透明性・光沢性を備え、ガス透過性や水気による曇りを防ぐ防曇性により、これらの作業を効率良くサポートしています。このように、社会を支える塩ビ素材は、食品・飲食分野においても欠かせない存在となっているのです。
| 1.自己密着性 | さまざまな形の器や食材にぴったり密着し、食材の鮮度を保ちます。 | 【1,2,3】 家庭用ラップ |
【1,2,3,4,5,6】 業務用ラップ(塩ビラップ) |
|---|---|---|---|
| 2.透明性 | 中身を一目で確認でき、食材管理や在庫チェックをスムーズに行えます。 | ||
| 3.耐熱・耐冷性 | 冷蔵・冷凍から電子レンジ加熱まで幅広く対応し、調理オペレーションを柔軟に支えます。 | ||
| 4.伸縮性 | 伸縮性により、食材をキュッと締め付ける成形作業や、食材の形に沿わせてラップ越しに食材の感覚を手で確かめながらの調理、調理作業全般に優れた特長を発揮します。 | ||
| 5.作業性 | くっつきすぎず、くっつきやすさとはがしやすさのバランスがよいため厨房作業の進行を邪魔しません。 | ||
| 6.防曇性 | 厨房環境でもラップが曇りにくく、食材の視認性を確保します。 |
飲食店の厨房では、一日の中でラップを何十回も扱うため、最も求められるのは機能バランスです。塩ビラップはしなやかに伸びて裂けにくく、軽い手触りが特長です。まな板や作業台にサッと敷いて衛生的な作業環境を整えたり、食材の形に沿わせてラップ越しに食材の感覚を手で確かめながら調理したりと、衛生面と作業性の両立に役立ちます。
また、塩ビラップはそのしなやかに伸びる特長により、ラップを伸ばしながら器へグッと密着させることができます。これにより一般的な家庭用ラップのいわゆるピタッと貼り付くのとは異なる、容器と一体化するような強い密着力が生まれ、汁物やスープの漏れをしっかり防ぎます。液体をこぼさず保持できるため、実際に飲食業界でフードデリバリーやテイクアウトでも大きな力を発揮しています。例えばラーメンのような汁物では、どんぶりに塩ビラップをグッと密着させれば出前の移動中に器が揺れても、ラップの隙間から汁がこぼれるのをしっかり防いでくれます。カレーのように蓋つき容器の場合は、容器にフタをセットした上から塩ビラップをグッと伸ばしながら、容器全体をぐるっと包むようにラップすることで、フタを内向きにしっかり押さえつけてくれます。これにより移動中の振動でもフタがずれにくく、中身の液体がこぼれることを防ぎます。
飲食店で塩ビラップが圧倒的な支持を得ている状況は、飲食店向け業務用ラップの素材別出荷量からも明らかです。塩ビラップは全体の約8割を占めており、他の素材を大きく引き離しています。
飲食店向け業務用ラップ販売量・ウェイト(素材別)
| 飲食店向け業務用ラップ(素材別) | 販売量(トン) | ウェイト(%) |
|---|---|---|
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 16,190 | 77% |
| ポリ塩化ビニリデン(PVDC) | 2,070 | 10% |
| ポリエチレン(PE) | 630 | 3% |
| 多層素材(PO) | 2,190 | 10% |
| 素材別 合計 | 21,080 | 100% |
塩ビラップは多くの飲食店で重宝されていますが、一方で環境問題への懸念が指摘されることもありました。ここでは、塩ビラップに対する環境問題の懸念について、安全性を示すエビデンスをもとに解説します。
インターネットなどで、塩素系ラップを焼却するとダイオキシンが発生するといわれています。これは1990年代に問題視されたダイオキシンの話題にも共通しており、環境庁(現・環境省)や研究機関に調査により、主因は焼却炉をはじめとした不完全燃焼(古い焼却炉・野焼き・家庭内などでの300~500℃の温度帯)であることが判明しています。
その後、環境省より平成12年1月に公布された「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づき基準を整備し、規制と技術改善が進められました。また、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づく廃棄物処理法施行令(政令)及び廃棄物処理法施行規則により、燃焼ガスの温度が800℃以上となる廃棄物焼却施設の設置が義務付けられました。
環境省が公表する「ダイオキシン類排出インベントリー」によれば、廃棄物焼却施設などからのダイオキシン総排出量は、1997年(平成9年)と比べて約99%減少しています。大気中濃度も0.57pg-TEQ/㎥から令和5年には0.018pg-TEQ/㎥にまで下がっており、定められた基準値0.6に対して約1/33のレベルになっています。
塩素は食塩や醤油、味噌などの食品や、水道水の消毒などにも含まれています。そのため塩素系ラップに限らず、ゴミは家庭内や屋外で焼却せず、各自治体の定める方法に従って廃棄することで、ダイオキシンの懸念はほとんどなくなっているといえます。
硬い塩ビ樹脂を柔らかくしなやかにするため、「可塑剤」という添加物が用いられます。1996年頃の報道において、この可塑剤の種類の一つであるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)が内分泌攪乱作用(いわゆる環境ホルモン)との関連で話題になったことがありました。
しかしながら、1998年に環境庁(現・環境省)が実施した「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」の調査により、DEHPに明らかな内分泌攪乱作用は確認されていないと報告されています。
また塩ビラップの原材料であるアジピン酸エステル化合物についても、試験の結果、明らかな内分泌攪乱作用は確認されていないと報告されています。
このSPEED'98の調査を踏まえ、環境省は「ExTEND 2005(内分泌かく乱化学物質問題への対応方針)」から、「EXTEND 2022」における取組みを経て、個々の化学物質について科学的根拠に基づき曝露量・影響・リスクを総合的に評価するという方向性が明確に示され、現在も取り組みが続いています。同時に国民への正確な情報提供やコミュニケーションを重視することを方針としています。
このように、日本の環境ホルモン対策はSPEED'98での網羅的な調査から、EXTENDによる評価手法の整理、リスクベース評価への移行という流れで発展してきました。
現在、食品用ラップを含む食品接触材料については、このような国の継続的な検討結果と法制度のもとで安全性が管理されています。
食品ラップの安全性は、食品衛生法(昭和22年12月24日法律第233号)第18条第3号の規定に基づき、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」で規格が定められています。この規格に基づき、材質試験および溶出試験を実施しています。この基準に適合している塩ビラップのみが製造・販売できる仕組みです。
塩ビラップである「キッチニスタラップ」はこの試験をすべて満たしており、「一般財団法人化学研究評価機構(JCII)」により適合製品であることを証明する確認証明書を取得しています。さらに、令和2年6月1日に施行された改正食品衛生法により、 食品用器具・容器包装について安全性を評価した物質のみを使用可能とする「ポジティブリスト制度」が導入されました。
キッチニスタラップは、この制度に準拠した材料で製造し、安全性を確保しています。
塩ビは、社会インフラから日常生活に至るまで幅広い分野で活用され、持続可能な経済コストで暮らしを支えてきました。また、制度の整備や技術の進展とともに、安心・安全性および環境への配慮も着実に向上させてきた素材です。
飲食店の厨房における塩ビラップは、食材の鮮度保持・衛生向上・作業効率化に大きく貢献する存在として、みなさまの快適な食生活を支え続けています。
【本記事について】
本記事は、食品用ラップフィルム製造メーカーとしての知見と、国や業界団体の情報に基づき、業務用ラップに用いられる塩ビ素材の特性および安全性に関する情報を解説したものです。
キッチニスタラップは、食品衛生法(ポジティブリスト制度含む)に適合した食品用ラップフィルムとして製造・販売されています。